有効加熱体(バスケット部分)の処理能力が1チャージ800kgから1tと大型のため大量の処理が可能となり、出荷までの大幅な時間短縮が計れます。
このようなメリットを持った大型の加圧冷却式真空熱処理炉の設置により従来の商品よりさらに高品質で低価格の商品を皆様にお届けできるようになりました。
主な処理
- 真空磁気焼鈍
- 応力除去焼鈍
- 固溶化熱処理 - オーステナイト系ステンレス鋼
- 析出硬化処理 - 析出硬化系ステンレス鋼(SUS630等)
- 時効硬化処理 - ベリリウム銅等
加圧冷却式真空熱処理
従来の焼入方法で処理される鋼製品は、冷却時に変形が発生するため精密部品などの後処理に大変な時間とコストが掛りました。
この加圧冷却式真空熱処理炉は加熱、冷却、焼戻し、冷却の熱処理サイクルをプログラミングし、最も変形の少ない値をコンピューターで制御します。また、窒素ガスで全体を均一に冷却するため精密部品や金型、複雑な形状のものや小さなものの熱処理に最適です。
「真空熱処理」について
炉内を減圧し、高真空下で輻射加熱し冷却する金属処理方法をいいます。代表的なものとして「真空焼入れ」「真空焼鈍」「真空固溶化(溶体化)熱処理」などが挙げられます。
[真空熱処理の特徴]
1.脱炭・加炭・粒界酸化のない優れた組織組成を成す
2.表面の光輝性に優れる
3. 酸化しない(光輝熱処理)
1ppmの不純物ガスが残存する真空圧力は1×10-1Paに相当します。
通常、真空熱処理は1×10-1Pa以下の真空中で処理されますから、酸化されやすい金属でも光輝熱処理ができ、脱ガス効果もあります。
真空熱処理の最大の特徴は、処理品の光輝性が優れていることである。しかし、被処理物の材質や熱処理の種類によって、加熱雰囲気の状況が大きく左右する。例えば、Tiの真空熱処理の場合、雰囲気に窒素ガスを用いると高温で容易に窒化物を形成するため、たとえ高真空であっても光輝性は得られない。この場合にはアルゴンなど不活性ガスを使用しなければならない。
ただし、この場合も不純物としての酸素・水・窒素などの反応性ガスの残留を極力減らす必要がある。
鉄鋼材料に関しては、酸素との親和力が強いCrを多量に含有するダイス鋼やステンレス鋼の焼きなましにおける着色・1000℃以上の高温から焼入れするダイス鋼や高速度工具鋼の肌荒れが よく問題になる。
4. 歪みが極少
真空熱処理加熱は、輻射熱だけで行われます。
このため他の熱処理に比べて、非常にゆるやかな昇温となり、処理品の表面と中心部の温度差が小さく、膨張・収縮が均一となり、歪みが少ない熱処理ができます。
5. 後加工が省略できます
真空熱処理したものは、表面は光輝性が保たれ、変形もごく少ないので、熱処理後の加工を大幅に削除できます。品物によっては、そのままご使用いただけます。
真空中では高温加熱によって酸化物の解離(還元傾向)を生じるため、高温から急速に冷却されるような焼入れの場合には着色しにくい。しかし、酸化傾向の強い低温域(500〜700℃)で加熱されたり、冷却過程でこの低温域をゆっくり通過するような焼きなましの場合には、微量の酸化性ガスの混在でも着色しやすいため十分な注意が必要である。
とくにCrを含有する場合は、その傾向が強いため、ダイス鋼やステンレス鋼を真空焼きなましする場合には、原則的には低真空よりは高真空のほうが優れた光輝性が得られる。この場合、たとえ高真空であっても、高純度のガスを使用したほうが有利なことは当然であるが、加熱前に十分にガス置換を行い残留空気を低減しなければならない。すなわち、焼なまし時の着色の原因は残留空気によるものであるから、ガス置換が不十分な高真空よりも、むしろ十分にガス置換された低真空のほうが良好な光輝性が得られる場合も多い。
●ダイス鋼および高速度工具鋼の焼入れにおける肌荒れ
1000℃以上の高温から焼入れするダイス鋼や高速度工具鋼の焼入れの場合、着色よりも合金元素の蒸発に伴う光輝性の低下の方がよく問題になる。すなわち、同一加熱温度であっても加熱時の圧力が低いほど合金元素の蒸発を生じるため、表面粗さが大きくなる。 特に1200℃以上の高温で加熱される高速度工具鋼の場合には、加熱時の圧力を極力高めたほうが有利である。
●真空ガス焼入れに伴うCr蒸着
真空熱処理を実施する場合、炉内における処理物の保持にはステンレス鋼や耐熱鋼製のトレイやバスケットが用いられている。
ところが、高速度工具鋼の焼入れの際にこれらを使用すると、処理後の表面Cr濃度に大きな影響を及ぼす。
前述のように、トレイやバスケットとして用いられているステンレス鋼などは、高速度工具鋼の焼入れ温度である1200℃くらいで真空加熱されると加熱圧力が低いほどCrが活発に蒸発する。この蒸発したCrは処理物の表面に蒸着してしまう。そのため、処理物の表面Cr濃度が本来の含有量以上に高くなってしまい、種々の問題が生じる。